しろいし緑の芸術祭

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アーティストと白石町のアートをめぐる—— アーティストトークイベント&鑑賞ツアーレポート

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2月17日に開幕した「しろいし緑の芸術祭」第一期。開催を記念して19日に行われた「アーティストトークイベント&鑑賞ツアー」には町内外から多くの人が参加しました。この記事では、イベントのレポートをお届けします。

2人の同級生の再会から始まった芸術祭

トークイベントでは、はじめに参加アーティストがこれまでの制作の歩みを基に自己紹介を行いました。

高校卒業まで白石町で育った木下友梨香さん。白石町の思い出や風景、自らが花農家で育ったバックグラウンドを抽象表現に落とし込み、作品を制作している。
佐賀を拠点に活動している塚本猪一郎さん。版画や油画、鉄のオブジェなどさまざまな表現方法で作品を制作。トークでは詩人・谷川俊太郎とコラボレーションした際の印象深い話も。
神奈川県・鎌倉を拠点に活動している原良介さん(右)。「人と自然と絵のあいだ」をテーマに絵を描いている。うつわが好きで新婚旅行の行き先は佐賀だった。白石町ではムツゴロウに感動。

しろいし緑の芸術祭が始動したのは、アーティストの木下さんと町内の精肉店TOMMY BEEFの店主・吉原龍樹さんが2年前に再会したことがきっかけです。2人は幼稚園から中学校まで同級生でした。

龍樹くんが「いつか白石で芸術祭をやるんだ」と2時間ぐらい熱く語ってくれたんです。私もいつか白石町で何かしたいなとはずっと思っていましたが、アートとどう結びつけられるのか想像できていなかったんですね。龍樹くんがTOMMY BEEFで町を新しくしようとしているのを知っていたから、話を聞いた時にすぐに実現をイメージできました。(木下さん)

といっても、すぐに実現に漕ぎつけたわけではありません。まずは、白石町の役場や白石町観光推進協議会に芸術祭やアートについて理解してもらうことからはじめ、一年かけて説得しました。今回、参加アーティストの選定も行った木下さん。基準について。

アーティストの知り合いはたくさんいるし、お声がけできる人はたくさんいると思っていました。でも実際に選ぶとなるとどういう基準で選べばいいのか迷って、悩みましたが「この町に対して作品をつくる姿勢が尊敬できる人がいい」と気づいた時に、塚本さんと原さんの顔がパンっと浮かびました。
二人の作品づくりの姿勢はずっと尊敬しているし、作品を見た瞬間に直感で「いい」と思える魅力があります。
それから、佐賀在住とそうでないアーティストのどちらも参加してほしかった。3人の性別や年齢がバラバラになることも自分の中では重要だったので、この組み合わせはとても良いなと。(木下さん)

このほか、白石町の印象や今回の作品づくりでチャレンジしたことをアーティスト3人それぞれが語りました。

アーティストと鑑賞者が対話する鑑賞ツアー

トークイベントの後は鑑賞ツアーへ。 
有明海のすぐ近くにあるふくどみマイランド公園へ。芝生が一面に広がり、休日は町内外から家族連れが遊びに来る憩いのスポットです。

木下さんが記憶している白石の風景—植物、太陽、海—を石に描いた作品。石は採石場として知られる唐津市七山から運んだもの。重たい石の運搬や作品の展示などは家族の協力を得て行ないました。

石に絵を描いたのは今回が初めて。チャレンジでしたね。人とのつながりや距離の近さ、巨大な作品の制作ができる場所があることなど、佐賀だからこそできた作品です。(木下さん)



塚本さんが制作したのは、向き合う2人のオブジェ。

マイランド公園を見て「この公園のシンボルになるものを作りたい」と思いました。
見たときにふっと笑顔になる。公園が暖かいものに感じられる。そういう立体的なものが作れたかなと。(塚本さん)

参加者からは「はじめから今の形でイメージできていたのか」という質問が。塚本さんは、「最初は紙でいろんな形のものを作る。それをここに持ってきて、一番しっくり来るものを選びました」と答えました。ほかにも、片方の顔だけ目があるのはなぜか、大きな鉄のオブジェをどうやって作っているのか、などアーティストと鑑賞者が直接話せる参加型ツアーだからこそのやりとりが生まれていました。

つづいて、須古地区の妻山神社へ。400年以上の歴史を持ち、主祭神として木の女神といわれる「抓津姫命(つまつひめのみこと)」を祀っている神社です。毎年10月19日の流鏑馬奉納や、年末のしめ縄づくりなど地域の人が集う場所でもあります。
原さんの作品は、かつて町の人が集まり劇などを行なった舞台に置かれています。原さんが制作したのは、巨大な手びねりの磁器彫刻。比較的大きな作品が作りやすい陶器と比べて、磁器での制作はチャレンジだったといいます。

作品には九州にちなんだ発想やモチーフが詰まっています。○△□は、江戸時代に活躍した聖福寺の禅僧・仙厓が描いた「○△□」図にちなんだもの。原さんは、それぞれを月、山の緑、有明の海にたとえて彫刻にしました。

九州に作品を置くから、海、山、月といった、ここの風土をつくるものを○△□で表したかった。
山は妻山神社の奥にある山をそのまま彫刻にしています。また、月は角度によって三日月に見えたり、満月に見えたりします。私たちは月の裏側を見ることができないけど、作品だったらそれができると思いながら作っていました。(原さん)

また、アートを見ることについて。

あんまり説明をしすぎると難解だなと思われるかもしれないが好きなように見てほしい。わからないと思っても、その感想に自信を持ってほしいです。「よくわからなかったんだよね」から対話が生まれますから。この作品が対話を生んで創造性を育むきっかけになったら嬉しいです。(原さん)

神社は茅の輪くぐりがある。それをもじって陽の輪にした。あれも磁器です。こんな形存在しないと思うんですけど。そういうものが空間にあるだけでキリッとした緊張感があるのかもしれない。(原さん)

町内外から60人以上が参加した「アーティストトークイベント&鑑賞ツアー」。なかには、東京から参加した人もおり、芸術祭への期待を感じました。第一期は、3月19日(日)に終了しましたが、作品は引き続き展示しています。ぜひ、足をお運びください。

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